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ここでλは波長、Vcは流速である。横軸は0.2m/sの潮流を考慮した際の出会い波との波長比であり規則波中の結果もこの横軸で補正して示している。規則波中漂流力(■)はL/λe=3でピークを持ちそれよりも短波長域では再び小さくなっている。風、波、潮流が混在する場での定常漂流力(●)は波漂流力のほとんどない長波長域でも大きく、また波漂流力ほど波長による変化が大きくないことがわかる。今回の実験では一定波高の規則波を造波したまま潮流、風を発生している。特に短波長域での波の乱れや波高の減少が大きかった。そのため、波のみの時の波漂流力に他の外力単独での漂流力を単純に足し込む(○)と短波長側でかなりの過大評価となってしまうことがわかった。複合外力下での応答や漂流(係留)力推定には波の変形や風の影響の考慮等に十分な注意を要する。

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Fig.10 Drift forces in each load and combined force

次に潮流中、風中の漂流力(全抗力=圧力抗力+摩擦抗力)の実験結果と推定値との相関について述べる計算による推定の場合、摩擦抗力係数は層流または乱流中におかれた平滑板に作用する摩擦抗力係数の計算式4)を参考に推定した。
層流中での摩擦抗力係数:

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乱流中での摩擦抗力係数:
Cf = 0.455 / (log(Re))2.58
ここでUは上流での流速、Lは船長、vは動粘性係数、Reはレイノルズ数である。上式より推定した摩擦抗力係数を用いて流速Uの場合の全抗力係数を以下で推定した。

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潮流中または風中実験で得られた漂流力を推定計算した摩擦抗力と圧力抗力の合計と比較した。Fig.11に水深90cmでの一様流による漂流力(全抵抗)の実験結果と、流場を層流と仮定して推定した摩擦抗力と圧力抗力係数Cpを0.8で推定した圧力抗力および推定全抵抗を示す。また、Fig.12に一様風による抗力の結果を示す。風の場合Re数が大きくなるので流場を乱流と見なして摩擦抗力を推定し、大松らの実験3)にもとづきCpを0.43として圧力抗力を推定した。各々横軸は流速と相当するRe数で、縦軸はρU2LB/2で無次元化した抗力係数である潮流中、風中共に全抵抗の実験結果と推定値は良好な一致を示し、圧力抗力と摩擦抗力はほぼ同じ大きさになっている深さ、喫水の小さい超大型浮体に作用する一様流(潮流、風)による漂流力推定には、前縁部に作用する圧力抗力と同様に上面、底面の表面積に作用する摩擦抗力の推定も非常に重要である。次に潮流による漂流力の浅水影響を調べた。Fig.13に水深を90cm,40cm,30cmと浅くしていったときの模型に作用する抗力を係数で示す。横軸は模型上流での流速と相当するRe数である。水深90cmと40cmの場合は流速が大きくなっても抗力はほぼ一定であるが、30cmの場合には流速が増すにつれて抵抗も増加する傾向にあるまた実験中模型後縁で計測した流速は上流での流速よりも早くなっていた。この原因としては水深が浅くなると海底と浮体底面の間で水路の閉塞効果が起こり、模型下の流速が速くなることが考えられる。浅海域に係留される超大型浮体の係留力を推定する場合には潮流による抗力の浅水影響も考慮する必要がある。
4. 緒言
大型弾性模型を用いた本研究結果から模型スケールでの風、波、潮流の複合外力下における弾性応答及び曲げモーメントの傾向および漂流力の特性を実験的に把握した。その結果、複合外力下での大型弾性浮体の変位応答や曲げモーメントを推定する場合には、波のみならず潮流、風の影響の考慮が重要であること、弾性変形を伴う複合外力下での大型弾性浮体の漂流力推定に関しては波、風、潮流各外力単独での値を線形に加えると過大評価となる可能性のあることを示した。一方、複合外力下での漂流力は長波長側でも大きく、波漂流力に比べて入射波長による変化の小さいことがわかった。また、一様な潮流、風による漂流力推定では浮体に作用する圧力抗力と摩擦抗力正確な推定が重要であることがわかった。実際にメガフロート構造物が係留設置されるであろう浅海域での係留力の推定には波浪以外に水深影響を考慮した潮流力の検討が必要であることを示した。

 

 

 

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